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2020年2月

2020年2月20日 (木)

危機管理ができない国はオリンピック・パラリンピックを開催できるのか?

またしても、日本の弱点が浮き彫りになっている。危機管理ができない。今回は、原発事故でなく、COVID19 の感染症対策である。クルーズ船での信じられない感染拡大は、危機管理の失敗によるものだったことが明らかになりつつある。他国は、日本からの情報を全く信用していない。船上での長期の隔離を経て、陰性とされ下船した人たちを、改めて14日間、軍の施設などに隔離する措置を、アメリカが取ったことが何よりの証拠である。世界に大恥を晒した厚生労働省の責任は限りなく重い。

クルーズ船内の措置状況については、ごく一部が、一人の専門家により伝えられたばかりで、今後、正確に検証する必要があるが、正しい専門的知識に基づいた断固たるリーダーシップが採られなかったこと、現場からの正確な情報に基づく判断がトップレベルによってなされなかったこと、関係者及び国民に対して的確な情報公開がなされなかったことが、直接の問題であったのではないかと考えている。さらに、その原因は、後代の歴史家によって、長期政権による政・官の組織的弛緩・疲労に求められることになるのではないか?官僚組織は、危機管理が苦手である上に、やっている感さえ出しておけば成果は問われないと高をくくっていたのだろう。過去数年間に官邸周辺で起こってきたことは、厚生労働省にも、どの府省にも波及するからである。

例えば、14日間の隔離という措置をきちんと実施することができる国とできない国の差は、非常に大きい。今後、企業でも大学でも構成員が感染する可能性があるが、自宅等で待機というような緩い感覚でいれば、広く社会への感染拡大は止められないだろう。シンガポールなどでは、感染者の入院隔離までの行動について、詳細な情報公開が行われている。日本では、自治体の判断に委ねており、統一的な基準がない上に、情報公開としては全く不十分である。今の情報程度では、感染リスクを具体的に感じられない。国民の不安心理をあおらないことに重きを置く一方、肝心の情報を秘匿して、感染予防への危機感をきちんと持ってもらおうとしない。この状態では、国内の感染は、一層の拡大期に入るに違いない。クルーズ船から下りた日本人たちは、公共交通手段で帰宅した上に、以後の行動に制約はないのだから、確率的にウィルスは拡散されることになる。実際に、下船したアメリカ人の中に、帰国の途上で発症した人もいたくらいで、陰性だったサンプル取得以降の隔離が不十分だったために、運の悪い人が新たに感染したかもしれないのである。こうしたオペレーションの不具合に関しては、誰がどういう責任を取ってくれるのだろうか?

もう一つ、非常に奇妙なのは、大人数が集合するイベントに関して、いまだに統一基準がなく、主催者がそれぞれの事情で、開催中止や縮小、あるいは予定通り開催を判断していることである。天皇誕生日の一般参賀の中止、東京マラソンの一般参加者の出場停止から、流れが変わったのかとの印象を持ったが、大相撲大阪場所やセンバツ高校野球は予定通り開催されるというのである。この国は、一体、誰が指令塔なのか?興行の中止は大きなビジネス上の痛手となるので、主催者としては中止等の判断が難しい。しかし、一環性のある働きかけがあれば、犠牲を伴う協力もするだろう。何を犠牲にして、何を守るのか、中枢の誰かが責任を一身に背負って方針を決めなければ、結果として不徹底になり、感染症対策に重きを置いて中止や縮小措置を英断した者も、全く浮かばれないのである。正直者が馬鹿を見ることになって良いのか?

私たちは、国家的な危機管理の失敗を絶対繰り返さないと、2011年の3.11で、十分すぎるほど反省したのではなかったのか?日本社会は、民主党等の政権から自民・公明党の政権になっても、何も変わっていないということなのか?この縮図が、地方自治体や企業や大学にも、同じように残っているだろう。外国人から、日本人は、骨のない愚か者ばかりだと馬鹿にされても仕方がない。

今回の事件で、既に日本国の信用は地に落ちている。果たして東京2020を予定通りに開催できるのか?世界のアスリートは喜んで東京に集結してくれるのか?日本経済の落ち込み以上に、日本国の価値下落が止まらなくなることを危惧する。感染症のように人類全体へ影響のある危機管理ができない国は、世界の誰からも尊敬されない。世界では、やっているふりは、まったく通用しない。

 

 

2020年2月17日 (月)

COVID19対策ができている大学はあるのか?

多くの大学は、ある程度の規模の企業のように事業継続計画(BCP)をきちんと策定していない。今回の新型ウィルス騒ぎの最中に、これまで無作為だった組織に期待しても仕方がないが、4月に新年度が始まる前には、大学は、かなりのパニック状態になるだろう。今のところは、教職員や学生の中国等への渡航禁止・延期くらいが話題だが、中国に一時的に戻っている学生、あるいは新規に入学する中国人留学生が、学生寮やキャンパスに入ってくる。その他、国内外での感染拡大とともに、中国以外からのリスクを抱えた学生も同じように入ってくるのを避けられない。厚生労働省や専門家からは、既に感染症対策のフェーズが上がり、国内で広範囲にウィルスが広がりつつあることを前提に、組織・個人で可能な限りの対策を講じることが求められている。感染が更に拡大した場合に、BCPがないと、大学の幹部を集めて役に立たない会議ばかりを開いて、時間を浪費することになりそうである。

特に、懸念すべきは、感染が懸念される教職員・学生には、14日間の自宅待機を指示することから、2020年度前期については学業保証が極めて不十分になる恐れが強いことである。加えて、東京2020大会の開催期間を考慮して、授業日程を実質的に2週間ほど減少させている大学さえあることである。さらに、学内の感染が拡大すれば、最悪の場合は、大学又は学部単位でキャンパスを閉鎖せざるを得なくなるかもしれない。ヒト同士の濃厚接触が避けられない運動部等の活動も、かなり制約されるだろう。残念ながら大半の大学では、授業の代替となるe-learningシステムを有していない。かりにWeb経由で授業案の骨子が学べるもの(パワーポイントに音声を入れた教材)があれば、十分といえないまでも役に立つだろう。そのようなシステム運用サービスは提供されているので、緊急の予算措置が実現し、教員の理解・協力が得られれば、今からでも導入開始が可能である。この感染症が、結果として、e-learningという学業保証のバックアップシステムの導入促進に一役買うならば、迫り来る危機から未来への果実が生まれることになるかもしれない。そのようなシステムは、中堅以下の私学が苦しんでいる学生の中退問題にも効果的に使える可能性があり、教育質保証の本質である授業内容の評価・改善にも有用であろう。したがって、危機管理対策への投資であるとともに、より中長期の経営戦略上の意味もある。

BCPにおけるもう一つのポイントは、取り組みが遅れているテレワークである。大学には定型的業務が多く、それらはテレワークで十分処理できそうだが、働き方改革が叫ばれる中でも、マネジメントの動きは鈍い。簡単に言えば、日本の大学は効率的に仕事をしていないので、教職員の生産性が低い。夏季休暇中は、学生がキャンパスにいない関係で業務量が減り、CO2削減対策でキャンパスの閉鎖(通勤通学禁止)までしている。その間は、新規の企画・調査や業務改善などで、日頃できない仕事を学外ですればよいと思うが、そうした書類の作成、打ち合わせの遠隔会議は、テレワークでも十分可能である。かりに夏季休暇でもない時期に、相当数の教職員が14日間も自宅待機になれば、テレワーク環境もないので、業務に支障が出るのは明らかである。また、予防的な観点からは、満員電車での通勤というリスクもできる限り避けたい。それならば、テレワークを駆使して、実働できる教職員を確保する方策を考えるのが、マネジメントとしての責任だろう。COVID19は、無症状の感染者もあるくらいで、本人の自覚がない場合は、感染リスクの認識もないので、予防は厄介である。したがって、事態は最悪に向かう可能性が強く、何も準備していない大学は「想定外」と呟きながら、事業継続の局面において大混乱に陥るに違いない。文部科学省も、この件での当事者意識は薄いから、準備なく状況に押し流されていく大学現場の判断に委ね、実質的に傍観するつもりだろう。皮肉なことだが、本当に優れた大学経営者が誰なのか、COVID19のおかげで、間もなくはっきりしそうである。

 

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