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2020年7月

2020年7月14日 (火)

なぜオンライン教育に関するデータ収集が必要なのか?

 

 

コロナ禍が東京問題なのか、いずれ分かることだが、東京都を含めて学校が通常授業の形態で実施されるようになり、オンライン教育に関する記憶が薄れようとしている。喉元過ぎれば熱さを忘れて、OECD諸国で最低のICT活用状況からも、目を背けるのは誤りである。学力が高いと喧伝されてきた我が国にとって、面目丸つぶれの話だが、これが誰の責任なのか、改めて明確にしてもらいたい。それはさておき、未来への教育政策の検討にも、教育手法の改革にも、全国でのオンライン教育の実践に関するデータの蓄積に早急に取り組んでもらわなければならない。ここでは、そのための具体策に関して、幾つかの提案をしておきたい。

 

 

1に、学校教育の現場での実践を可能な限りすべてアーカイブ化することである。仕組みは文科省が主導して構築すればよい。網羅的に収集することにより、専門家による分析を経て、現場での独自の優れた教育実践を抽出するとともに、教育委員会によるオンライン教育への取り組みについて、今後の課題と将来への展望が明らかにできるはずである。このアーカイブは、個人情報保護の観点から調整のうえで、調査研究を希望する者には学校関係者を含めて広く公開することが望ましい。コロナ禍がなければ、我が国の遅れを強く認識する機会もなかっただろう。その意味で、災いも転じて福となしうる。こうした事態に陥ったのには、複合的な要因があるだろうが、特に、ICTの教育利用について、意思決定に携わる教育関係者が、総じて無能力・無関心・無責任だったからであろう。上から下までICT音痴がそろっているようでは、OECD諸国で最下位もやむをえまい。かりに自治体の首長がいかに熱心でも、教育委員会が「できない理由」や「やらなくてもよい理屈」を繰り返しているうちに、今日の体たらくを招いたものと思われる。したがって、責任と権限のあるポストに、できる人、やる人を起用しない限り、今後も変革は期待できない。

 

 

2に、オンライン教育に関連して、教員及び保護者への包括的な全国調査を行うことである。オンライン教育は、家庭の社会経済的地位の格差が、児童生徒の学習成果(学力)の格差を一層増幅したとの指摘がある。コロナ禍による家庭の経済(収入)への影響、家庭におけるICT環境、在宅での学習の実施状況、保護者による指導可能性などを含めて、踏み込んだ調査を行い、オンライン教育を契機に、我が国の戦後教育が取りこぼしてきた「教育格差」の本質について、実態把握のためのデータを取得することが望ましい。また、教員については、自らのICT活用能力、児童生徒の学習効果、家庭環境が低位の児童生徒への指導などに関して、情報データ収集を行う必要がある。同時に、教員及び保護者から、現状の改善策についてもアンケートを取ると良いだろう。マスク2枚を全戸に配布するために、数百億円の国家予算が支出されたのは、腹立たしい限りだが、上記の調査に数億円かけても、罰は当たらないだろう。予算を組み替えてでも今年度内に実施する価値がある。

 

 

3に、ICT活用に関する環境を整備し、予算を付け、情報を集積したとしても、最終的に現場の教員のICT活用能力が向上しないと、児童生徒への教育効果は期待できない。徹底的に研修によるレベルアップを図るしかない。そのためのシステムの整備が急務である。さしあたり、民間資格であるデジタルアーキビスト(上級・正・準)の取得を目指すことにしたらどうか?また、個々の教員のスキルアップは当然だが、現場の底上げを図るには、スクールカウンセラーのような位置づけの専門人材を学校(あるいは学校群)に配置したらよいのではないか?特に、技術面でのサポートが充実すれば、一般教員にとって、未知の領域を開拓していく際の不安の解消に大いに役立つだろう。その際、学校司書教諭や学校司書の制度は、ICT支援を含むライブラリアンの新しい形に、見直すべきだろう。眠り込んでいた後進国ニッポンは、この分野で、よほど継続的に頑張らないと、国際的な先頭グループに追いつけないだろう。

 

 

4に、大学に関しても、オンライン教育の実態をきちんと調査しておく必要がある。高校も底辺校から進学校まで実質的に教育には大きな違いがあるが、大学ではピンからキリまでの幅が一層増している。現場で行われているオンライン教育(方法も内容も千差万別のようだがブラックボックスに入っている状態)が、学習成果の観点からどう評価しうるのか、法制度の運用という意味からも、実態を把握しておく必要がある。その上で、オンライン教育という新しい分野に関して、我が国として、有用なノウハウを蓄積していくべきである。多くの大学で、オンラインは一時しのぎの暫定的なものとしか認識されていないようなので、残念ながら世界から取り残されてしまう危険性が高い。大学の経営者たちのレベルが問われるところだが、一流企業の経営陣とは異なり、ICT活用に精通した者が理事や副学長に全くいないケースも珍しくない。そうした大学は、学生にとって気の毒なことに、授業料のコスパが極めて悪くなっているはずである。

 

 

以上、文科省には、コロナ禍を契機としたオンライン教育の実践に関して、時を移さず、全国的な情報データ収集を行い、教育施策や指導実践に生かしていくことを期待したい。今日において極めて重要な課題となっている教育格差の緩和、ICTの教育活用の推進に、本腰を入れて取り組んでもらいたいからである。一部の知事さんたちが震源となった9月入学騒動はすっかり収まったので、意味のある情報データ収集に基づく本格的な政策立案を実現することが、国民からの信頼回復になるだろう。情報データ収集の機を逃すことは、明るみに出た後進国ニッポンからの脱出の機を逃すことになる。ICT教育活用が最下位という汚名を着たまま、不作為を続けるとすれば、到底罪を免れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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